「営業と恋愛って、同じですか。それとも違いますか。」
そう聞かれることがあります。今日はこの質問に、正面から答えます。
結論から言うと、同じです。ただし、「何が同じで、何が同じじゃないのか」までちゃんと分けて話さないと、この答えは薄っぺらいアドバイスで終わります。ここを20年の営業経験から、できるだけ具体的に言い切ります。
この記事を書くきっかけは、単純な質問でした。「営業のスキルって、恋愛にも使えるんですか」。この質問に、ちゃんと答えたことが今までなかったな、と思ったのが始まりです。
結論を先に言ってしまいましたが、たどり着くまでの過程の方が役に立ちます。特に、「同じところ」を探すよりも、「違うと思っていたものが、実は違わなかった」という部分に、一番大事な話が詰まっています。
同じところ:結局、話し方と伝え方で相手を動かす
営業も恋愛も、最終的にやっていることは同じです。自分の思いを、話し方と伝え方で相手に伝えて、相手の心を動かす。これに尽きます。
営業では「この商品を選んでほしい」という思いを伝えます。恋愛では「あなたのことが好きです」という思いを伝えます。伝える中身は違っても、伝え方の構造は同じです。誠実に、まっすぐに、自分の言葉で伝えられるかどうか。ここで結果が決まるのは、どちらの世界でも変わりません。
だから「営業のスキルは恋愛に使えるのか」と聞かれたら、迷わず「使えます」と答えます。話し方・伝え方という土台が同じだからです。
これは、テクニックの話ではありません。「どんな言葉を使えば落とせるか」という表面的なマニュアルの話ではなく、もっと手前の話です。相手に何かを伝えるとき、自分がどれだけ本気で、どれだけ誠実にその場に立っているか。ここが伝わるかどうかで、結果はほとんど決まります。
営業の世界では、これを「熱量」と呼んだりします。以前の記事(本当に美味しいものは、黙っていても伝わらない)でも書きましたが、本当に良いと思っているものは、自然と言葉に熱がこもります。逆に、心のどこかで迷っていることは、どんなに言葉を選んでも、微妙に伝わってしまいます。相手はそれを、驚くほど正確に感じ取ります。
恋愛でも同じです。「本当に好きだ」という気持ちが本物なら、それは話し方や表情、ちょっとした間の取り方にまで出ます。逆に、なんとなく好きかもしれない、くらいの気持ちで動いていると、それも相手に伝わってしまいます。
じゃあ、営業のやり方を恋愛に持ち込んで失敗したことは? 正直、ないです
ここで正直に言います。「営業のやり方をそのまま恋愛に持ち込んで、明らかに失敗した」という経験は、私にはありません。
普通なら「そんなはずないだろう」と思われるかもしれません。ですが理由があります。私は営業の場でも、恋愛の場でも、同じことをやってきませんでした。それが「駆け引き」です。
焦らす。あえて連絡を減らす。素っ気ない態度を取って相手の反応を見る。本音を隠して、相手を試すような言葉を投げてみる。こういう駆け引きを、私は営業の現場でも一度もやったことがありません。相手を試すような真似は、単純に失礼だからです。
お客様に対して駆け引きを仕掛ける営業マンは、遅かれ早かれ見抜かれます。「この人は自分を試している」と気づかれた瞬間、信頼は崩れます。だから私は、営業でも恋活の相談に乗るときも、駆け引きという選択肢そのものを持っていません。持っていないものは、恋愛に持ち込んで失敗しようがないんです。
世の中でよく言われる「恋愛の駆け引き」を、営業目線で見てみる
恋愛の世界には、駆け引きを勧める話がたくさんあります。既読をつけてすぐ返信しない方がいい。少し素っ気なくした方が追いかけたくなる。好きだとバレる前に相手の気持ちを試した方がいい。こうした話を聞いたことがある方は多いです。
これを営業の世界にそのまま置き換えてみてください。
- 問い合わせに、わざとすぐ返信しない営業マン
- 本当は乗り気なのに、あえて素っ気ない態度を取る営業マン
- お客様の本音を探るために、遠回しに揺さぶりをかける営業マン
どれも、選ばれる営業マンの姿とは正反対です。お客様は「駆け引きされている」と感じた瞬間、警戒します。契約が決まりかけていても、一気に冷めます。営業の世界では、これは基本の基本として避けるべきこととして教えられます。
恋愛だけ、駆け引きが効くという特別なルールがあるとは、私には思えません。むしろ人の心が動く仕組みは、営業でも恋愛でも同じだからこそ、駆け引きは同じように逆効果になります。
駆け引き型とストレート型、2つの連絡の仕方
具体的な場面で比べてみます。マッチングアプリで、気になる相手とやり取りが続いているとします。
駆け引き型:返信が来てもすぐ返さない。1日、2日と間を空けて、「追いかけたくなるように」する。楽しかったのに、あえて「そこまで楽しくなかった」ような素っ気ない文面にする。
ストレート型:楽しかったら「楽しかったです」とそのまま伝える。会いたいと思ったら「また会いたいです」と伝える。返信できるタイミングで、素直に返す。
駆け引き型は、うまくいっているように見える瞬間があります。相手が「あれ、どうしたんだろう」と気にする様子を見せることもあります。ですが、それは「あなたに興味がある」からくる反応ではなく、「よく分からない相手への不安」からくる反応であることが多いです。不安は、長くは続きません。やがて「面倒くさい」に変わります。
ストレート型は、地味に見えるかもしれません。ですが、伝わっているのは「不安」ではなく「好意」です。積み重なるのは信頼です。営業で長く選ばれ続けるお客様との関係も、結局はここに行き着きます。
「違い」だと思っていたものは、実は「共通のルール」だった
ここまでを整理すると、面白いことに気づきます。「営業と恋愛の違い」を探していたのに、見つかったのは「営業と恋愛に共通するルール」でした。
駆け引きをしない。相手を試さない。まっすぐ伝える。これは恋愛だけの特別なマナーではなく、人と人が向き合うときの、もっと根っこにあるルールです。営業だから駆け引きをしない、恋愛だから駆け引きをする、という使い分けは、そもそも成立しません。
だから私は、「営業と恋愛は同じか違うか」と聞かれたら、こう答えます。本質はまったく同じです。違って見えるのは、恋愛の世界でだけ、駆け引きという回り道が”普通のこと”として広まっているからです。
なぜ「恋愛だけは駆け引きが必要」と思われがちなのか
恋愛の世界で駆け引きが根強く語られる理由は、なんとなく分かります。相手の気持ちが見えない不安、簡単に手に入らないものほど価値があるように感じる心理、追いかける方が燃える、という感覚。こういうものは、確かに人の心の中に実際にあります。
ですが、これは「駆け引きが効果的だから広まった」というより、「駆け引きが刺激的で、話のネタとして広まりやすかった」だけです。刺激的な話は伝わりやすく、地味な話は伝わりにくい。それだけのことです。
営業の世界にも、似たような「刺激的だけど中身が薄い」テクニック論はたくさんあります。ですが、長く数字を出し続けている人ほど、そういう小手先の話から離れて、シンプルな誠実さに戻っていきます。20年見てきて、そこは恋愛も同じです。
悩んでいる人に、営業の知恵を1つだけ渡すなら
もし恋愛に悩んでいる人に、営業の現場で学んだことを1つだけ渡すとしたら、迷わずこれを渡します。
好きなら、言葉にすること。
これは以前の記事(告白のタイミングは、クロージングの瞬間と同じです)でも書きましたが、ここでもう一度、正面から言います。
本当に思っているなら、好きだと言葉にしなければ、相手には伝わりません。どんなに態度で示しているつもりでも、言葉にしない限り、相手の中では「たぶんそうかな」という推測のままです。推測は、いつまで経っても確信になりません。
言葉にすると、なぜ叶いやすくなるのか
言葉にすることには、もう一つ効果があります。言霊です。以前のハブ記事(本当に美味しいものは、黙っていても伝わらない)でも触れた考え方ですが、口に出したことは、自分自身の行動を変えます。
「好きです」と口にすると、その瞬間から、自分の中で「叶えるために何をするか」を逆算して考え始めます。連絡の取り方が変わります。会う頻度を増やそうとします。相手のために時間を作ろうとします。言葉にする前と後では、自分の行動そのものが変わるんです。
だから、口にすることは単なる「気持ちの表明」ではありません。自分自身を動かすスイッチでもあります。
自信がない人ほど、口にした方がいい
「自信がないから言えない」という相談をよく受けます。ですが、私の考えは逆です。自信がない人ほど、口にした方がいいです。
自信がないまま黙っていても、自信は自然には湧いてきません。むしろ、口にすることで初めて、自分の行動が後から追いついてきます。言葉が先、行動と自信が後。この順番だと、私は考えています。
逆に、自信がつくまで待ってから伝えようとすると、いつまで経ってもタイミングは来ません。自信は「伝えた後」についてくるものだと考えた方が、現実的です。
口にした後、何が変わるのか
「好きです」と言葉にした後、具体的に何が変わるのか、もう少し掘り下げます。
まず、自分の頭の中の優先順位が変わります。それまで「なんとなく気になる人」だった相手が、「大事にしたい相手」として、はっきり位置づけられます。位置づけが変わると、時間の使い方、連絡の頻度、相手のために動く量が、自然と変わっていきます。
次に、相手との関係の状態がはっきりします。言葉にする前は、お互いに「たぶんこうかな」という推測の中で動いています。推測の中では、次の一歩が踏み出しにくいものです。言葉にした瞬間、そこに具体的な現実が生まれます。良い返事であれば関係は次の段階に進みますし、そうでなくても、次にどう動くべきかがはっきりします。どちらに転んでも、前に進みます。
止まったままより、進んだ方がいい。これは営業でも恋愛でも、同じです。契約が決まる前も、決まった後と同じくらい、動いている時間の方が長いのが営業です。恋愛も、告白した瞬間がゴールではなく、そこから関係を育てていく時間の方がずっと長い。言葉にすることは、その長い時間のスタートラインに立つことでもあります。
「駆け引きしないと、軽く見られませんか」という不安について
ここまで読んで、こう思う人もいるかもしれません。「駆け引きせずにまっすぐ伝えたら、簡単に落ちる人だと思われて、逆に大事にされないのでは」。この不安も、営業の目線で分解できます。
営業の世界にも、似た不安を持つ人がいます。「すぐに本気度を見せたら、足元を見られるのでは」「あまり簡単に対応すると、安く見られるのでは」。この不安自体は、よく分かります。
ですが実際は、逆のことが起きます。誠実に、はっきりと向き合ってくる相手を、雑に扱う人は、長い目で見れば少数派です。むしろ、誠実さに対しては誠実さで返そうとする人の方が多いです。ここで雑に扱ってくる相手であれば、それは「駆け引きが足りなかったから」ではなく、単純に相手と自分の価値観が合っていなかった、ということです。
軽く見られるかどうかを分けるのは、「まっすぐ伝えたかどうか」ではなく、「自分の気持ちに、ちゃんと軸があるかどうか」です。まっすぐ伝えつつ、自分の時間や気持ちを何でも差し出すわけではない、という軸さえ持っていれば、駆け引きをしなくても、軽く見られる心配はほとんどありません。
勘違いしないでほしいこと
ここまで「まっすぐ伝えることが大事」と書いてきましたが、これは「何でもかんでも思ったことを口に出していい」という意味ではありません。
相手の状況や気持ちを無視して、一方的に距離を詰めることは、まっすぐな伝え方ではなく、ただの押しつけです。まっすぐ伝えるというのは、自分の気持ちを誠実に言葉にすることであって、相手の意思を無視することではありません。相手が明確に拒否している、あるいは負担に感じているサインがあれば、そこで止まるのも、まっすぐな誠実さの一部です。
まとめ:駆け引きするかどうか、それだけの話です
営業と恋愛が同じか違うか。20年やってきて出た答えはこうです。
- 相手を動かすのは、結局のところ話し方と伝え方。ここは営業も恋愛も同じです。
- 駆け引き・相手を試す行為は、営業の世界では基本的に避けるべきこととされています。恋愛だけ特別に効くとは思えません。
- 「違い」だと思っていたものの正体は、実は「共通のルール」でした。駆け引きをしない、というルールです。
- 悩んでいる人に渡すなら、答えは1つ。好きなら、言葉にすること。
- 言葉にすれば、言霊が働きます。自分の行動が、叶える方向に変わっていきます。
- 自信がない人ほど、口にした方がいいです。自信は、言葉にした後についてきます。
駆け引きという回り道をやめて、まっすぐ伝えること。それが、営業20年が恋愛にそのまま持っていける、一番シンプルな答えです。テクニックを増やすより、この1つを外さないことの方が、よっぽど効きます。
よくある質問
Q. 駆け引きが全く通用しない、ということですか?
「駆け引きで一時的に相手の気を引けることがある」という話自体は否定しません。ただ、それは信頼関係の上に長く積み上がるものではない、というのが営業の現場で見てきた実感です。長く続く関係につながりやすいのは、まっすぐな伝え方の方です。
Q. まっすぐ伝えたのに、うまくいかなかったらどうすればいいですか?
まっすぐ伝えた結果は、選べません。ですが、伝え方を誠実にできたこと自体は、次にもつながる財産になります。断られた理由が明確なら、そこから学べます。理由がはっきりしないまま距離を置かれたなら、それは縁がなかったというだけのことです。
Q. 言葉にするタイミングが分かりません
タイミングについては、以前の記事(告白のタイミングは、クロージングの瞬間と同じです)で詳しく書いています。あわせて読んでみてください。
Q. 営業経験がなくても、この考え方は使えますか
使えます。ここで書いているのは、営業のテクニックそのものではなく、「駆け引きより誠実さの方が、結局は選ばれる」という、もっと根っこの部分の話です。営業経験があってもなくても、まっすぐ伝えることは誰にでもできます。むしろ、余計なテクニックを知らない分、素直に実践できる人もいます。
先入観・固定概念を捨てて、まっすぐ向き合うことについては、第一印象で切るのが、一番もったいないですもあわせてどうぞ。
どのサービスで出会うかに迷ったら、恋活・婚活で使えるサービス、結局どれがいいのか。目的別に6つ整理しました。も参考にしてください。
あわせて読みたい:本当に美味しいものは、黙っていても伝わらない。営業20年が気づいた、恋愛にも効く2つの力。
あわせて読みたい:告白のタイミングは、クロージングの瞬間と同じです。ただし、伝え方だけは決定的に違います。
あわせて読みたい:第一印象で切るのが、一番もったいないです。営業で「どうせ断られる」に負けていた私の話。
あわせて読みたい:喋るのをやめたら、成績が伸びました。恋活も、6割は聞くことだと思います。
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